住職のショートショート:エピソード47「損か徳か」

損か徳か

ある日、
「○○の親戚の者ですが」とお電話をいただきました。

○○さんは、△△年前に死去され、私がお葬式を勤めました。
参列者は、葬儀社のかたと喪主様と私の3人でした。
「お布施は四十九日にお渡しします。」との事で、大変お金に困っておられるご様子でした。
当日お参りに寄せていただきました。
お宅には表札がなくて、空き家のようでした。
お隣さまが、「もう引っ越しされて、いまはどなたも住んでおられないですよ。」
とご親切に教えてくださいました。

今回の電話は、その出来事を私に一瞬にして思い出させました。
お電話の主は、その事情は全くご存知ないことでしょう。

確か当時、「お前は苦労が足りない、甘いな、ちゃんとしないから
そんな目にあうんやで、、、」
と知人から言われたように記憶してます。

今回その出来事を友人に聞いていただきました。
また「お金の管理が甘い」と言われそうに思いましたが、
友人は、「多分、そのお布施を踏み倒した人は、悪いことしたと罪悪感を持っているに違いない。あなたは住職として当然の行動をしました。」と、私を肯定的に見てくれました。
私は徳を積む事ができたのかもしれない。
親の葬儀のお布施を踏み倒すくらいなら、他にもいっぱいそのような事が、
あったように推察されます。
今頃どうしておられるのだろうかと、思い出しています。

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