住職のショートショート:エピソード4「数メートル下がって見てください。水槽の魚」

数メートル下がって見てください。水槽の魚。

お寺の学習会がありました。

一緒に学んでる方と、その後カフェでコーヒーでも飲みながら反省会をする事になりました。
「稲垣さん、申し訳ないけど、学校によってくれへん?」と私に依頼されました。
その方は小学校の教員で、植木の花々に水をやりたいからという事でした。

私は夜9時を回って誰もいない小学校に初めて行きました。
セキュリティを外し、電気をつけると、そこは誰もいない静かな空間でした。
ふと廊下の隅に目をやると、大きな水槽外来魚たくさん泳いでいました。
張り紙に「数メートル下がって見てください、魚たちの自然な泳ぎが見えます。と有りました。
そばで覗き込むように魚を見ると、魚たちは意識して普段の泳ぎをしないそうです。

親という漢字は、木の上に立って見守るという意味だと、教えていただいています。
木の上に立てる親っていくつくらいなんだろう?
私は脚立さえ登っては危ないと止められています。
親は見守っているつもりでも、子供は監視されてると受け止めているかもしれません。
むしろ子供の方が親をよく観察しているかも知れません。
親も子もお互いに、自然な姿に出会えたのは、仕合せなことかも知れません。

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